
林芳正参議院議員に聞く
『新政界往来』2020年3月号に掲載された、「林芳正参議院議員に聞く」の記事をご紹介します。
■徳田ひとみ
雇用形態や働き方まで、社会全体が大きな変革期を迎えています。時代のニーズに沿って、大改革をしなければいけない時代に入っていますね。別途、日本の労働問題、教育問題にも多少関係ある件ですが、個人的に経験したことで先生にお願いしたいことがあります。
ブータン名誉総領事を務めておりましたが、総人口が約80万人のブータンから何と740名近くの日本語研修留学生が来日しました。ブータン独自の深刻な問題を抱えた来日でもありましたが、学生達の支援を通して様々な問題点を知ることができました。その中の一つが、敢えて乱暴な言い方を致しますと、ブータン始めアジアからの留学生を受け入れる日本語学校、専門学校が驚くほど数多く存在していて、大変残念なことに、教育機関としての責任感がない学校がこれまた呆れるほど多いということでした。学校が卒業生の職場を斡旋するシステムも然りです。アジアをリードする素晴らしい国、日本で学び働く!と大きな夢を持って訪れた若者たちは失望し傷ついて帰国します。メディアでも取り上げられましたが、親日国から来た多くの若者が、日本での生活に疲れ、傷つき、日本を嫌いになって帰っていくのです。
この状況は日本の将来にとって大きなマイナスになります。
是非日本語学校や専門学校など海外留学生受け入れ機関をしっかり精査し、認定してほしいとお願い致します。
海外留学生は労働力不足の解決策の一つといわれていますが、日本国内だけでも充分な潜在的労働力があるとも言えます。長寿社会になって経験豊かな有能な方が退職後も元気でおられるし、また引きこもりの若者も多い。このあたりを改善し、環境を整えたら必ずしも労働力不足とは言えないのではないかと思います。
働くことの素晴らしさとか、日本国家の一員であるという誇りと責任を持つような教育が必要ではないかなと思いますね。ひとり一人が与えられた命に感謝し、自分はどのように生きていくかを考察する時間を教育の中に入れていくと良いのではないかと思います。精神的に1人の人間として自立し、他国の人を差別しないで受け入れる寛容な心を持った豊かな日本人を育てていくことがこれからはとっても大事じゃないかと思います。
■林芳正参議院議員
なるほど、そうですね。とても大事なことだと思います。道徳の科目を教科にするとき、ずいぶん、野党から反対がありましたが、ただ十段階で評価とかそういうものではないので、きちっと先生が記述式でもって、その人の強み弱みを評価することが大事になってくると思います。
それから、この4月から新学習指導要領になるのですが、この中の大きな基本的考え方に、何を学ぶかだけではなく、どうやって学ぶか、その2つの 組み合わせによって、何ができるようになるのか、社会や国にどういう貢献ができるのかが入っています。
この3つをきちっと意識しながらやっていこうというわけです。
私がこれからのお子さんに大事だと思ったのは、大臣時代に提言もしましたが、課題を与えられて、それにすぐ答えるというのが今までの教育でしたが、これらは人工知能で検索をすればすぐ出てきます。
AI(人工知能)にはできないといわれているのは、チームをまとめるとか、みんなが同じ意識を持って、ワンチームとして努力するコンセンサスをつくるとかの共同体形成力です。対人型でお医者さんが患者さんと直接触れ合って、安心感が与えられます。これもAIにはできないことです。
これらのことをやるには読解力、コミュニケーション能力 、それから少し学年が上がっていくと、協調心とかリーダーシップとかが大事になります。
そのために、アクティブラーニングというのがあります。ディベートとまでいかなくても、お互いに話をしながら、学んでいく。道徳の授業も、こうしたいじめがあって、そばで見ていた自分がいじめられることを恐れて何も言えなかった。こういうことがないようにしましょうと先生が言って終わりではなく、例えば、実際にロールプレイングをやって、いじめる役、いじめられる役、傍観する役をやって、今度はいじめられる役をやった子が傍観役をやった時に少し声が出る。こういうのがあります。
基礎的な能力は必要だが、それをどうやって学ぶか、問題を出されたら解くというだけにとどまらず、「何のために」を学びながら学校に行ってもらうのが大事になると思います。
極端な話、知識だけを学ぶなら、学校はいらなくなります。スマホ一台、PC一台だけで十分、学習できるし、全部、通信教育でできます。アクティブラーニングのようなことを行う場にしようというのが、新学習指導要領の背景にある考え方です。それに加えて小学校からプログラミングをやるとか、英語もやるとかいろんなものが入っています。こうした事を1つずつ地道にやっていくことが、これからのソサエティー5・0の実現にとって、大事なことです。
詳しくはこちら
『新政界往来』2020年3月号
http://shin-seikaiourai.jp/article/202003_1/